【数Ⅰ】2次方程式の解の公式から学べる,基本だけど大切な6つのこと

高校数学のツボ
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基本問題2問を通して,勉強のポイントを確認します

簡単に解けそうな問題を2問出題しますので,それぞれ解いてみましょう。

受験生が引っかかりやすい点がありますので,十分注意して下さい。

第1問

次の公式を証明しなさい。ただし,\(a,~b,~c~\)は実数の定数とする。

2次方程式の解の公式

2次方程式\(~ax^2+bx+c=0~\)の解は

\begin{align*} x=\dfrac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \end{align*}

である。

[1]公式は覚えるだけでなく,証明できるようにしよう

シンジ

知ってるっスよ。覚えてるっスよ。解も求められるっスよ。でも,証明しろって言われると・・・?

元気が出る
独学コーチ
長宮慶次

シンジくんみたいな人は多いと思うよ。公式は覚えなきゃダメだ!というのはみんな思っているだろう。でも,「公式は覚えただけではダメだ」とまで思っている人は少ないよ。

シンジ

覚えて,使えているから安心してたっス。

元気が出る
独学コーチ
長宮慶次

公式が証明できるようになると,入試における実践的な力になるんだ。実際,公式を証明させる入試問題は数多い。教科書に載っている公式のうち,どれくらい証明できるか,試して欲しい。もちろん目標は「すべて証明できること」だ。

\(a eq 0\)なので,2次方程式\(~ax^2+bx+c=0~\)の両辺を割って

\begin{align*} x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=& 0 \\ \left( x+\frac{b}{2a} \right)^2-\left( \frac{b}{2a}\right)^2+ \frac{c}{a}=& 0 \\ \left( x+\frac{b}{2a} \right)^2=& \frac{b^2-4ac}{4a^2} \\ x+\frac{b}{2a} =& \pm \sqrt{\frac{b^2-4ac}{4a^2}} \\ x+\frac{b}{2a} =& \pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{|2a|} \\ x=& -\frac{b}{2a} \pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a} \\ =& \frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \cdots \text{(証明終)} \end{align*}

シンジ

ああ!平方完成っスね。言われたら簡単だけど,思いつかなかったっス。

長宮慶次

ある程度勉強し,公式などの知識が増えてきても,テストの点数が伸び悩む人がいます。いくつか理由はあると思いますが,その一つの理由が「公式の理解が浅い」ことです。自力で証明できる公式を増やしましょう。

シンジ

公式の証明の大切さが分かったっス。・・・ところで,気になる点が一つあるんすけど。解答の下から3行目,分数の分母に縦棒が2本ありますけど,印刷ミスっスか?

長宮慶次

いやいやそうじゃない。これは絶対値記号だよ。教科書や市販の問題集で,ここを省いているモノは多いけど,私がわざわざ書いたのは,ついでに絶対値記号についても学んで欲しいからだよ。

[2]ルートをとるときは絶対値記号を忘れないようにしよう

絶対値とルート

\(a~\)を実数とする。

\begin{align*} \sqrt{a^2}=|a|= \begin{cases} a&\quad (a \geqq 0) \\ -a&\quad (a < 0) \end{cases} \end{align*}

長宮慶次

無条件に\(\sqrt{a^2}=a \)としてはならない。\(a \geqq 0 \)のときはいいけれど,\(a \le 0 \)のときは間違いとなる。ルートは必ず\(~0~\)以上の数だからね。

シンジ

そういえばそうでしたね。その絶対値記号を外すと・・・ああ,前にプラスマイナスの記号があるから,どちらにしても同じになるんっスね!

長宮慶次

そうそう,絶対値記号に気付かなくても,結果は同じになる。しかし,結果は同じでも,絶対値記号のことを考えた人と考えなかった人の差は大きい。答えが合っていても,途中の考え方に不備がないか,確かめながら勉強して欲しいね!

シンジ

はい!分かりましたっス!・・・ところで,最初の「\(a \neq 0 \)なので・・・」ってところ,平方完成と関係なさそうなんスけど,いりますか?

長宮慶次

お!いいところに気がつきましたね。次のポイントに関わりがあるので,申し訳ないけどその答えは後回しにします。さあ,次の第2問を考えてみましょう。

シンジ

・・・意地悪っスねえ。

第2問

次の方程式の実数解を求めよ。ただし,\(a~\)は実数とする。

\begin{align*} ax^2+3x+1=0 \end{align*}

[3]文字定数の条件に注意しよう

シンジ

簡単じゃないスか!さっきの公式使えばいいんスから。こんなかんじっス。

【シンジの解答1】

2次方程式の解の公式より \begin{align*} x=& \frac{-3 \pm \sqrt{3^2-4\cdot a \cdot 1}}{2a} \\ =& \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \cdots \text{(答)?} \end{align*}

シンジ

どうスか?満点っしょ!

長宮慶次

ははは,残念。見事に引っかかったね。

シンジ

何がいけないんスか!?計算ミスしてますか?

長宮慶次

いや,計算は合ってるよ。そこではなくて,2次方程式の解の公式を,無条件に使ったところだよ。\(a=0~\)のときは2次方程式ではないので,\(a=0~\)のときと\(a \neq 0~\)のときで場合分けしなくちゃいけないんだよ。

シンジ

あ,そういえばそうか。引っかかったっスよ・・・あれ?でも第1問で,そんな場合分けしてないスよ?なのになぜ第2問は場合分けしなくちゃいけないんスか?

[4]数式だけでなく,問題文の日本語にも注意しよう

長宮慶次

そう,第1問と第2問は,どちらも\(~x^2~\)の係数が\(~a~\)なんだけど,第1問は場合分けしなくてよく,第2問は場合分けしなければならない。それは,問題文で見分けなければならないんだ。

シンジ

問題文スか?ええと,\(a~\)について,第1問は「ただし,\(a,~b,~c~\)は実数の定数とする。」,第2問は「ただし,\(a~\)は実数の定数とする。」・・・一緒じゃないスか?

長宮慶次

そこじゃないんだ。「方程式」という単語を探してごらん。

シンジ

「方程式」っスね?ええと第1問は・・・あ,「2次方程式の解の公式」ですね。じゃあ第2問は・・・最初ですね,「この方程式の・・・」あ,「2次方程式」じゃない。「2次」が付いてない「方程式」だ。これっスか?

長宮慶次

そう,そこだ。第1問は「2次方程式」と書いてあるので,\(a~\)についての条件として\(a \neq 0~\)としてよい。つまり,\(a=0~\)のときのことは考えなくていいんだ。しかし,第2問は違う。2次方程式とは書いてなくて「方程式」としか書いていない。だから\(a=0~\)のときは1次方程式であり,\(a \neq 0~\)のときは2次方程式になる。だから第2問は場合分けしなくてはならないんだ。

シンジ

そうかあ,確かに数字や数式には目が行きますが,日本語のところはあんまりしっかり読んだことないっスねえ。

長宮慶次

そうなんだ,結構そういう人は多い。だから自分で知っているつもりの知識・公式であっても,よくよく考えてみることが必要なんだ。数式だけでなく,日本語のところもね。さあ,それを踏まえて,解答を作り直してもらおうかな。

シンジ

OK!もう大丈夫っスよ。・・・これで満点っスね?

【シンジの解答2】

[1]\(a=0~\)のとき \begin{align*} 3x+1=& 0 \\ x=& -\frac13 \end{align*} [2] \(a \neq 0~ \)のとき \begin{align*} ax^2+3x+1=& 0 \\ x=& \frac{-3 \pm \sqrt{3^2-4\cdot a \cdot 1}}{2a} \\ =& \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \end{align*} したがって \begin{align*} x= \begin{cases} -\frac 13 \quad & (a=0 ~\text{のとき}) \\ \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \quad & (a \neq 0 ~\text{のとき}) \end{cases} \cdots \text{(答)?} \end{align*}

長宮慶次

はい,残念。また間違いです。

シンジ

何でやねん!ちゃんと場合分けしてるやんけ!・・・って何で大阪弁になってるん(笑)。

[5]方程式の「解」には虚数解が含まれることに注意しよう

長宮慶次

まあまあ,興奮しないで(笑)。大丈夫,シンジくんなら分かるよ。もう一度よく問題文を読んでごらん。第1問と第2問で違うところはないかな?

シンジ

違うところって,「公式を証明せよ」と「実数解を求めよ」だから問われていることも違うし・・・・待てよ?第2問は「実数解を求めよ」なんだけど,第1問の公式は「2次方程式の解の公式」・・・もしかして「解」と「実数解」の違い?

長宮慶次

正解!そうなんだ。「方程式の解」と「方程式の実数解」は似ているけど違う。「方程式の解」には虚数解も含まれているけれど,「方程式の実数解」にはもちろん虚数解は含まれない。

シンジ

ということは,2次方程式の解の公式をそのまま使うのではなく,実数解になるかどうかを調べなきゃならないってことっスね。分かった!判別式や!

長宮慶次

そうです。もう満点の解答,書けるよね?

シンジ

楽勝っス!・・・これでどうだ!

【解答】

[1] \(~a=0~\)のとき \begin{align*} 3x+1=& 0 \\ x=& -\frac13 \end{align*} [2] \(~a \neq 0~ \)のとき \begin{align*} ax^2+3x+1=& 0 \\ x=& \frac{-3 \pm \sqrt{3^2-4\cdot a \cdot 1}}{2a} \\ =& \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \end{align*}

\( \quad 9-4a>0~ \)すなわち\(~a < \frac94~\)のとき,実数解は \( \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \)

\( \quad 9-4a=0~ \)すなわち\(~a= \frac94~\)のとき,実数解は \( -\frac{3}{2a}\)

\( \quad 9-4a<0~ \)すなわち\(~a> \frac94~\)のとき,実数解なし

 

以上より

\(a=0~\)のとき,実数解は\(-\frac13\)

\(a<0,~0< a < \frac94~\)のとき,実数解は \( \frac{-3 \pm \sqrt{9-4a}}{2a} \)

\(a= \frac94~\)のとき,実数解は \( -\frac{3}{2a}\)

\(a> \frac94~\)のとき,実数解なし

長宮慶次

はい,満点です。

シンジ

よっしゃあ!

[6]答えを求めるだけでなく,解く過程からたくさんのことを学び取ろう

長宮慶次

ということで,2次方程式についての基本問題2問を通して,大切なことを5つ学んできました。

長宮慶次

数学の問題は,ただ答えが合えばいいというモノではありません。勉強しても勉強しても,数学の点数が伸びない,と悩んでいる人は,もしかしたらただ問題を解いているだけになっているのかもしれません。

長宮慶次

どうせ勉強するならば今回のように,一つの問題からいくつものポイント(高校数学のツボ)を学びましょう。そして,分かったつもりになっていることを見直し,さらに深い理解に到達しましょう。

この記事のまとめ

 

基本だけど大切なこと
  1. 公式は覚えるだけでなく,証明できるようにしよう
  2. ルートをとるときは絶対値記号を忘れないようにしよう
  3. 文字定数の条件に注意しよう
  4. 数式だけでなく,問題文の日本語にも注意しよう
  5. 方程式の「解」には虚数解が含まれることに注意しよう
  6. 答えを求めるだけでなく,解く過程からたくさんのことを学び取ろう
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