前回の記事で、「ベクトルの世界」にはベクトルのルールがあり、「数の世界」とは同じ記号を使っていても、違うルールがあることを学びました。今回の記事はその続きです。
- 勉強してもベクトルがなかなか解けるようにならない人
- ちょうどベクトルを習い始めた人
問題文から式を立てる、立てた式を計算する、という流れを意識しよう
さあさあ、もったいぶらずにベクトルのツボの3つ目、教えてくださいよ。もう待ちくたびれちゃったっスよ。
ごめんごめん。ちょっと記事が遅くなってしまいました。では早速3つ目のツボについてお話ししよう。 シンジ君は、ベクトルの問題を解くとき、何から始めるかな?
え?何から始めるか?あらためて聞かれると何て答えていいか。。。あ!筆箱から鉛筆を出すっス。それから始めるっスよ。
それはそうだろうけど(笑)。問題を見たら、もちろんよく読むよね?それから何をする?
そりゃ問題を解くっスよ。カリカリ計算していくっスよ。
そこなんだけど、「問題を解く」という過程には、大きく分けると2つのステップがあることに気付いているかな?
?いやあ。。。あまり考えたことなかったっス。
2つの過程とは、「式を立てること」と「計算すること」です。この2つを区別していないと、ちょっと難しくなった時に自分が何をしているのか見えなくなって、混乱してしまうことがあります。
言われてみればそうっスね。計算するのは式ですから、まずは式を立てないと計算できないっスね。
そうなんだよ。数学の問題はすべてこの「式を立てること」と「計算すること」の2つの過程を経て解くことができるんだ。中でもベクトルは、その2つの過程がわかりやすい。問題文を読んだら、ほとんど苦労することなくすべての式を立てることができるんだ。
そうっスかあ?そんなに簡単には思えないんスけど。。。
それはおそらくシンジ君が、目についた式をとりあえず計算してみたり、行き詰まったら問題を読んで式を立てたり、その場その場で思い付きのように解いているからじゃないかな?
あ、そう言えばそうかも。
ベクトルの問題は、式を立てるところまではさほど苦労せずに進められます。手順としては、次の通りです。 まず問題文から式を拾います。問題文には、数式の部分と日本語の部分があるよね。数式の部分というのは、例えば「\(a+b=1\)とする」みたいな部分ね。ここはそのまま使えるので拾っておきます。次に、日本語の部分を読んで、そこから式を作ります。例えば「\( \vec{\rm{OA}}\)と\(\vec{\rm{BC}}\)は垂直である」とあれば、\( \vec{\rm{OA}}\cdot \vec{\rm{BC}}=0\)という式を作ります。これで、問題を解くために必要な式は、すべて立てたことになります。そうしたら、あとは計算するだけなのです。
うーん、聞いているととても簡単なように思えるっすけど、やってみると簡単でないのは何故ですかね?
式を立てるために「図形の性質」と「2つの重要公式」を用いる
もし、式を立てる段階でつまずいているとしたら、図形の性質についての知識が不足している可能性があります。例えば「点Dが三角形ABCの外心である」とあったら、ベクトルの式を立てるために、三角形の外心についての知識が必要となります。ここが原因の場合は、ベクトルを克服するために平面図形も並行して勉強しましょう。
ちなみに、「点Dが三角形ABCの外心である」と問題文にあったら、3つの式を立てます。
他には、せっかく公式を知っているのに、式を立てるときに忘れてしまっている・・・というのもよく見かけます。シンジ君は、ベクトルの式を立てるときに、ほとんどがある2つの公式を利用していることに気付いているかな?
うーん、気付いていないって言うのはシャクだしなあ。。。きっと、無意識のうちに気付いているっス。
「無意識」で「気付いて」いるっておかしいでしょ!。。。まあいいや。式を立てる際によく使われる公式は次の2つです。
受験生が式を立てられないとき、ほとんどこの2つのうちのどちらかであることが多い。だから、この公式は式を立てるために使う、と強く思っておこう。
へえ、たった2つっスか。なんか、ベクトルの式を立てることが出来そうな気がするっス!
本当は、実質1つだといってもよい
でも式を立てたら、次は計算っスよね?計算がうまくいかないときはどうすればいいっスか?
「内積を用いる」ことと「基準ベクトルに揃える」ことが、計算過程のポイント
計算でつまずく人は、前回の記事で書いた「ベクトルのルール」を理解していない人に多い。内積を掛け算だと思っていたり、\(0\)と\(\vec{0}\)の区別ができてない人のことね。
ふむふむ。それは克服できたような気がする。
そのルールをわかっていてなお、計算がうまくいかない人は、きっとポイントを押さえていないのだと思う。
ポイントなら大丈夫っスよ。俺、貯めるの好きなんスよね、ポイント。やっぱまとめて交換した方がいい商品がゲットできるし・・・
そのポイントじゃないよ。。。。まあいいや。ここではポイントを2つ挙げておこう。1つは「内積を利用すること」だ。内積というのはとても便利な数値なので、内積を利用すれば計算をスムーズに進めることが出来る。というか、内積なしで計算を進めることは手間がかかる。
へえ。
問題文に内積が与えられていればいいけれど、問題文から内積を計算して出しておかなければならない問題も多い。「わかりません」と質問に来る生徒の中には、内積を求めようという意識が希薄な人が多いね。
でも内積って言っても、いろんなベクトルが出てくるので、どのベクトルとどのベクトルの内積を計算すればいいのか、わからないんじゃないスか?
それはもう一つのポイントを理解すればわかる。そのポイントとは「立てた式は、基準ベクトルで表すこと」だ。
基準ベクトル?教科書には載っていない用語のような気もするっスけど。。。
うん、載っていないかも。でも概念はすぐにわかるよ。平面ベクトルなら2つ、空間ベクトルなら3つのベクトルを用いれば、平面上の点、空間上の点を表すことが出来るだろう?それを基準ベクトルと呼んでいるだけだよ。
その基準ベクトルって、問題を見ただけでどれなのかわかるっスか?
問題文で指定してあることも多いし、すぐにわかると思うよ。さらに言うなら、どのベクトルを基準ベクトルとするかは、自分が決めたっていいんだ。つまり、平行でないベクトルであれば、どの2つを基準ベクトルにしてもいいんだよ。
保留していた「どのベクトルの内積を求めればいいのか」というシンジ君の質問への答えはもうわかるだろう。もちろん、「基準ベクトル同士の内積を求める」である。
へえ、基準ベクトルは自由に選べるっスか。いいっスねえ。でも、基準ベクトルに揃えたら次はどうするんスか?
基準ベクトルに揃えられたら、たぶんもう解けているよ。同じベクトルだったら係数を比較するなどはする必要があるけど、そこまで来たらもう解けているといってもいい。
本当っスかあ!聞いているとベクトルの問題が簡単に思えてくるっス!じゃあ、問題文を見て式を立てたら、あとは基準ベクトルに揃えて計算していけば解けるってことっスか?
まあそうだね。その流れを意識して問題集の開設を読めば、流れがわかると思うよ。
ひゃあー。これはすごい”ベクトルのツボ”っスねえ。解きたくなってきたっスよ。
それはいいことだ。やる気になっているときこそ、伸びるチャンスだよ。
おおし!じゃあとりあえず問題集を買いに行ってくるっス!
持ってないのかよ。。。。
この記事のまとめ
- 問題を解くためには「問題文を読んで式を立てる」ことと「立てた式を計算する」ことの2つの過程があることを理解し、自分がどこでつまずいているのかを確認しましょう。
- 式を立てるところでつまずいている人は、「ベクトルの重要公式2つ」と「平面図形の知識」について復習しましょう。
- 計算過程でつまずいている人は、「内積を利用すること」と「基準ベクトルに揃えること」を意識しましょう。