【数Ⅰ】勘に頼らずにできる!因数分解のツボ(3)

高校数学のツボ

前回に続き,因数分解のツボについての記事です。

勘に頼っていると,解けるときと解けないときがあるはずです。

必ず解けるようになるために,正しい手順を身につけましょう。

前回と前々回の記事はこちらです。

勘に頼らずにできる!因数分解のツボ(1)

勘に頼らずにできる!因数分解のツボ(2)

覚えておきたいテクニック

長宮慶次
長宮慶次

因数分解をするうえで,最も大切なことは前回の記事で伝えた「次数の低い文字について整理する」ことです。

シンジ
シンジ

そうでした。ちゃんと覚えてるっス。

長宮慶次
長宮慶次

ただ,できればもう少し知っておきたいことがある。知らないと,解けるけれども大変な苦労をしなければならないことがあるからね。

シンジ
シンジ

「苦労は買ってでもしろ」ということわざもありますけどね。

長宮慶次
長宮慶次

数学においても苦労した方がいい場面はある。でも,いつもいつも苦労する計算をするのは非効率的だ。ちょっと工夫することで計算の手間が省けたりするので,積極的に習得してほしい。

シンジ
シンジ

了解っス。

長宮慶次
長宮慶次

では紹介しよう。入試において習得すべき手法は次の3つだ。

複雑なものをシンプルに見せる”置き換え”

まず最初のテクニックは「置き換え」です。典型的な問題として,次の例題を見てみましょう。

次の式を因数分解しなさい。
  1. \(x^4+x^2-2\)
  2. \(x(x+1)(x+2)(x+3)-24\)
シンジ
シンジ

どこから手を付けるかな・・・あ,置き換えだから,\(x^2~\)を\(~t~\)と置き換えたりするのかな?

長宮慶次
長宮慶次

冴えてるねえ。(1)はそれでいけます。(2)はちょっと難しいよ。いきなり置き換えるのではなく,一部だけ展開したあとに置き換えます。一度は経験しておかないと難しいかな。

シンジ
シンジ

何か悔しいなあ。絶対解いてやる。ええと・・・・。

(1) \(\quad \)途中で\(~x^2=t~\)と置き換える。 \begin{align*} x^4+x^2-2&=t^2+t-2 \\ &=(t-1)(t+2) \\ &=(x^2-1)(x^2+2) \\ &=(x-1)(x+1)(x^2+2) \end{align*} (2) \(\quad \)途中で\(~x^2+3x=A~\)と置き換える。 \begin{align*} x(x+1)(x+2)(x+3)-24&=x(x+3) \times (x+1)(x+2) -24 \\ &=(x^2+3x)(x^2+3x+2)-24 \\ &=A(A+2)-24 \\ &=A^2+2A-24 \\ &=(A-4)(A+6) \\ &=(x^2+3x-4)(x^2+3x+6) \\ &=(x-1)(x+4)(x^2+3x+6) \end{align*}
シンジ
シンジ

ふう。なんとかできたけど,難しいっスね。

長宮慶次
長宮慶次

まあね。(1)は初見で思いつくことができても,(2)は難しいかもね。でも一度経験すれば「ああ,あれかな」と気づくことができるようになるよ。何事も経験が大切なのさ。

初めて見たときは「反則だ!」と叫びたくなる”複2次式”

例題を見てみましょう。

次の式を因数分解せよ。
  1. \(x^4+x^2+1\)
  2. \(x^4+4\)
シンジ
シンジ

あれ?(1)はさっきの問題と似てるっスよ。また\(~x^2=t~\)と置き換えて・・・ん?解けない・・・まあいいや。気にせず次の(2)を考えよう・・・?(2)なんて何をどうすればいいのか,きっかけすらわかんないっス!

長宮慶次
長宮慶次

これらはちょっと特殊な解法と言っていいだろう。実際,教科書によっては載っていないこともある。でも,入試ではたまに見る形なので,ここで一緒に学んでおきましょう。解答は以下の通り。ポイントは,\(a^2-b^2=(a-b)(a+b)\)を利用するために,項を足したり引いたりして調整するところかな。

(1) \begin{align*} x^4+x^2+1&=(x^4+2x^2+1)-x^2 \\ &=(x^2+1)^2-x^2 \\ &=\left\{ (x^2+1)-x \right\} \left\{ (x^2+1)+x \right\} \\ &=(x^2-x+1)(x^2+x+1) \end{align*} (2) \begin{align*} x^4+4&=(x^4+4x^2+4)-4x^2 \\ &=(x^2+2)^2-(2x)^2 \\ &=\left\{ (x^2+2)-2x \right\} \left\{ (x^2+2)+2x \right\} \\ &=(x^2-2x+2)(x^2+2x+2) \end{align*}
シンジ
シンジ

ちょちょ・・・ちょっと待ってくださいよ。何スかこれ。こんなの思いつくわけないっスよ。もともと無かったものを足したり引いたりして,反則じゃないっすか!

長宮慶次
長宮慶次

ははは!シンジ君がそう言いたくなるのも無理はない。何を隠そう,私も高校生のとき同じことを言ったよ,「こんなの反則だ!」てね。でも,単純にうまいなあ,凄いなあ,と思わないかい?

シンジ
シンジ

・・・確かに。自分で思いつくことはできないけど,考えた人はすごいなあって思うっス。

長宮慶次
長宮慶次

だろう?数学を学んでいると,こんなことはよくあるんだ。そして,最初は反則だ!と思っても,徐々に自分でも使えるようになる。たくさん持っているテクニックの一つになっていくんだ。シンジ君が3つくらい階段を上って力がつくと,こんな問題は数ある簡単な問題に過ぎない,と思えるようになるよ。

シンジ
シンジ

・・・だといいっスけどね。

覚えておきたい公式

最後は,覚えておきたい公式です。数Ⅰではなく,数Ⅱの教科書に載っています。教科書によっては載っていないものもあるようです。

覚えておきたい3次式の公式

\(a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)\)

入試では普通に使われますので,まとめて覚えておきましょう。例えば次のような問題で使われます。

次の式を因数分解しなさい。
  1. \(x^3+3xy+y^3-1\)
  2. \((x-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3\)
シンジ
シンジ

?さっきの公式をどこで使えばいいのか,全然わかんないんスけど。

長宮慶次
長宮慶次

(1)は,\(-1\)を\( (-1)^3 \)とすればわかるよ。(2)はちょっとうまい置き換えが必要だ。答は以下ね。

(1) \begin{align*} & ~\quad x^3+3xy+y^3-1 \\ &=x^3+y^3+(-1)^3-3\cdot x \cdot y \cdot (-1) \\ &=\left\{ x+y+(-1)\right\} \left\{ x^2+y^2+(-1)^2-xy-y\cdot (-1)-(-1)\cdot x \right\} \\ &=(x+y-1)(x^2-xy+y^2+x+y+1) \end{align*} (2)\(\quad y-z=X,~z-x=Y,~x-y=Z~\)とおく。\(X+Y+Z=0~\)となるので \begin{align*} &\quad (x-y)^3+(y-z)^3+(z-x)^3 \\ &=X^3+Y^3+Z^3 \\ &=(X+Y+Z)(X^2+Y^2+Z^2-XY-YZ-ZX)+3XYZ \\ &=3XYZ \\ &=3(x-y)(y-z)(z-x) \end{align*}
シンジ
シンジ

うわー,(2)はまたすげーな。思いつくかな,こんなこと。

長宮慶次
長宮慶次

ちょっと感動だよね。でも因数分解に限らず,複雑な形を見たら,うまく置き換えてシンプルな形にすることを心がけるといいよ。それにしてもこの問題の解答,美しいよね・・・ってこう思う私は変でしょうか?

シンジ
シンジ

変っス。

この記事のまとめ

POINT
  • 覚えておきたいテクニックが3つある
  • 上手い解法には感動し,経験として取り込もう
  • (ちょっと変な)数学好きは,数学の問題や解答に「美しい・・・」という


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