前回に続き,因数分解のツボについての記事です。 勘に頼っていると,解けるときと解けないときがあるはずです。 必ず解けるようになるために,正しい手順を身につけましょう。
前回の記事はこちらです。
〔2〕最も重要!次数の低い文字について整理する
解法にも重要性の違いはある
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因数分解をマスターするうえで,最も大切な部分を紹介しよう。 ヒット曲には盛り上がるサビの部分があるように,フランス料理にはメインディッシュがあるように,因数分解にも最も重要な手法というものがあるのだ!
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・・・たとえがイマイチ微妙っす・・・。早く教えてくださいよ。
「次数の低い文字について整理する」は重要なポイント
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(・・・ちょっと恥ずかしい)コホン,因数分解で重要なこと,それは「次数の低い文字で整理する」という手法だ。学校の先生からも習っただろう?
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うーん,聞いたことあるような気もするけど・・・因数分解だけでたくさん習ったので,そのうちの1つにあったような気がするっス。
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そこだよ,そこが問題なんだ。教科書に練習問題がいろいろ載っているよね。それらをなんとなく解いているだけでは,重要なポイントに気付かないんだ。たくさんある因数分解の手法の中でも,最も重要な手法がこの「次数の低い文字について整理する」という手法なんだ。
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学校の先生は,そこまでは強調していないっス。授業では淡々と問題を解いていくだけでした。
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たぶん,問題を解かせて解説することに必死なんだろうね。ただ,解き方をいろいろ紹介するだけではまだ不十分だ。解き方には重要度に違いがあるからね。思い出してほしい。因数分解を勘に頼らずに解こう,というのがこの記事のテーマだったよね。そのための重要なポイントがここだ。因数分解のツボはここだ,と言ってもいいだろう。
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へえ。わかりました。「次数の低い文字について整理する」ですね,しっかり覚えておきます!
例題でわかる重要性
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では具体的に見ていこう。次の問題を利用して説明しよう。どう?解けそうかな?
- \( x^2-(a+b)x+ab \)
- \( x^2+xy-2y^2+2x+7y-3 \)
- \( a^3(b-c)+b^3(c-a)+c^3(a-b) \)
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ん?(1)は公式じゃないですか。\( x^2+(a+b)x+ab=(x+a)(x+b) \)ですよね?
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もちろんそうだ。でもここはあえて公式を使わないで解いて欲しい。
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えーと「次数の低い文字について整理する」でしたね・・・おー本当だ,ちゃんと解けたっス!
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だろう?では全部見てみよう。
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ううう・・・(2)は何とか基本公式のたすき掛けだと気づきましたけど,(3)は難しいっス・・・
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(3)については解説を加えよう。1行目で\(~a~\)について整理しています。そのときの\(~a~\)の係数\(~b^3-c^3,~\)定数項\(~b^2-c^2~\)はそれぞれ\( (b-c)(b^2+bc+c^2),~(b-c)(b+c) \)と因数分解できます。ですから2行目で\( (b-c) \)で括っています。
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ふむふむ。
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\( (b-c) \)で括った残りの右かっこの中を見ると,次数が低いのは\(~b,~c~\)です。ですから,3行目で右かっこを\(~b~\)について整理しています。すると,また\(~c-a~\)で括ることができることが分かりますので,4行目で\( (c-a) \)で括っています。
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おお!また次数の低い文字について整理するのか!
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まだまだ。そのあと残った右かっこを見ると,次数が低いのは\(~c~\)ですから,5行目で\(c~\)について整理します。すると,\(b-a~\)で括れることがわかるので,6行目で\((b-a)~\)で括ります。
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おお!また使うのか!結局3回使うんですね?すげー!
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そう,基本公式を当てはめても分からない場合は,この「次数が低い文字について整理する」という手法を使えば,かなり見えやすくなるはずだ。「困った時の神頼み」ということわざがあるが,「困ったときには整理する」も新しいことわざとして覚えておいてくれ!
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・・・(笑ってほしいのかもしれないが,スルーしておこう)・・・ちなみに最後の7行目はいるんですか?
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ここは,数学的には6行目と変わらないのだが,慣例としてこう変形するようになっている。\(a \to b \to c \to a \)と循環するよう整理するんだ。そうした方が美しいだろう?
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わかるようなわからないような・・・数学ができる人って,それまでずっと理論的に話していたのに,いきなり「美しい」なんて情緒的な言葉を使うんだよなあ・・・それって矛盾してるように見えるんスけど・・・
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えっ?何か言った?
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いえ,何でもないっス。(まだ3番目の話を聞いていないので,機嫌を損ねないようにしとこう。)
次の記事,「勘に頼らずにできる!因数分解のツボ(3)」に続く。
この記事のまとめ
- ただ数をこなすだけでは,重要性に気付かない
- 「次数の低い文字について整理する」のは因数分解において最も重要な手法
- 「困ったときには整理する」は新しいことわざ?