半額払い戻しセールは、50%引きではない

ちょこっと数学

受験には必要ないかもしれないけれど,もしかするとあなたの人生においてちょこっと役に立つかもしれない、そんな記事です。まあ,勉強の合間に休憩するつもりで読んでください。

半額払い戻しセールは5割引き?

シンジ

JK先生、新しくできた駅前のパン屋知ってます?

長宮慶次

ああ、カミさんが行きたいと言ってたので知ってるけど、まだ行ったことはないんだ。

シンジ

今日まで開店セールで50%引きになってますよ。行くしかないっスよ。

長宮慶次

おお!それはお得だね。あとで行ってみよう。

そのパン屋に行ったあと、長宮慶次は・・・。

長宮慶次

シンジくん、ありがとう教えてくれて。開店セールに間に合ったのでお得にパンが買えたよ。パンも出来立てで美味しいね。

シンジ

でしょう?俺、あのパン屋お気に入りなんスよね。

長宮慶次

でも、一つだけシンジくんの情報で間違っているものがあるよ。

シンジ

え?何か間違ってました?

長宮慶次

うん、開店セールは50%引きではなかったよ。半額払い戻しセールだった。ほら、僕はパンを1000円分購入したので、こうしてあのパン屋で使える500円券を貰ったんだ。君も貰ったんだろう?

シンジ

そうですそうです。俺もその券貰いました・・・って何が間違ってるんですか?50%引きじゃないスか。

長宮慶次

半額払い戻しセールは50%引きセールではないよ。

シンジ

なんスか、セールの名称の違いっスか?JK先生も細かいなあ。言葉の違いったって,半額と50%引きなんかどっちでもいいじゃないスか。実質50%引きなのは変わらないんだし。

長宮慶次

いや名称のことを言ってるんじゃないんだ。文字通り、50%引きではないんだよ。

シンジ

ん?半額は50%でしょう?

長宮慶次

半額は表示金額の50%だね。

シンジ

だったら半額払い戻しセールなので50%引きじゃないスか。

長宮慶次

いや、よくそう勘違いする人は多いし、おそらくお店もそう勘違いしてくれることを期待しているだろう。50%引きと聞くとインパクトあるからね。でも落ち着いてよく考えてみれば違うんだよ。 ちょっとした数字のマジックなんだ。

シンジ

うーん、よくわかんないっす。

長宮慶次

そうあっさりと諦めず、もう少し考えてみないかい?ちょっと考えれば,小学生にでもわかるよ。

シンジ

ええ?わかんなければ小学生以下っスかあ?よし,絶対考えてやるぞ・・・

2分後・・・

シンジ

・・・やっぱりわかりません。小学生からやり直します・・・

長宮慶次

ははは。説明すれば小学生でもわかる,と言っただけで,わからなかったら小学生以下だ,とは言ってないよ。半額払い戻しセールについて深く考えたことがない人は,シンジ君だけでなく,おそらく大人の中にもたくさんいるよ。では説明しよう。

「モノを買う」とは,モノとお金を交換することである

長宮慶次

「物を買う」という行為は、買う人と売る人の間で,お金と商品を交換しているのだ、というのはわかるよね。

シンジ

そりゃそうっスね。

長宮慶次

さて、僕からパン屋に渡したものは何だい?

シンジ

そりゃお金っす。

長宮慶次

そう僕は1000円をお店に渡したんだ。そのお金と交換に僕は何を受け取った?

シンジ

1000円分のパンと・・・500円分の券スね。

最初にパンを買った時点では,まだ何も得していない

長宮慶次

そうだね。さて、この時点で僕は得したのかな?

シンジ

半額戻ったので、もちろん得してるんじゃないスか?

長宮慶次

でも、戻ったのは500円分の券であって、現金500円ではないよ。

シンジ

まあそうスね。でもそのパン屋では使えるからお金みたいなもので・・・あ、もしかして、まだ使ってないから得はしてないってことスか?

長宮慶次

そう、お金をもらえたのであれば得したといってもいいだろう、500円で買えたのと同じことだからだ。しかし,もらったこの500円券は,使わなければただの紙切れだ。この紙切れを大切に、と神棚に飾っておいたりするかい?

シンジ

しませんね。それより有効期限があるので、忘れずに使おうとするっスよ。

2回目にお店に行ったとき,はじめて割引が受けられる

長宮慶次

そう、この500円分の券は、使ったときに初めて得をするんだ。そこで,次にパン屋に行ったときにこの500円券を使ったとしよう。話を簡単にするため、このとき500円分のパンを購入したとしよう。僕はパン屋に何を渡す?

シンジ

500円券っス。

長宮慶次

では僕はパン屋から何を受け取る?

シンジ

もちろん500円分のパンっす。

長宮慶次

そう、これでようやく僕は得したことになるんだ。2日間のやり取りを,合わせて見てみよう。

長宮慶次

結局僕はパン屋に1000円を渡している。かわりに貰ったパンは1500円分だ。3分の1安くなっている、つまり33%引きだということだね。

シンジ

おお、そうか!

長宮慶次

しかもこれは最大で33%なんだ。2回目に行ったときに、つい1000円分のパンを買ったとしよう。この場合、僕がパン屋に渡すのは500円券に加えて500円の現金だ。こうなると、2日間の合計で僕が支払ったのは1500円、貰ったパンは2000円分なので、4分の1安い、つまり25%引きとなる。

シンジ

うーん、安いのは安いけど,50%引きに比べると,かなりインパクト弱くなったっスね・・・

長宮慶次

そうなんだ。お店側はなるべくお客さんに来てもらいたいので、インパクトのある広告を出したい。でもあんまり割り引きすぎると利益が減ってしまう。そこで考えられたのが半額払い戻しセールだろう。「半額」とインパクトのあるワードがあるけれど、店側の負担はせいぜい33%、実質は20%くらいではないかな。

シンジ

うわあ。騙されたっスね。

長宮慶次

騙されたというのはちょっと言いすぎかな。お店は嘘はついてないからね。単に買う側が勝手に勘違いして喜んでいるだけだ。お店も売り上げが上がって喜んでいるので,誰も損していない。

シンジ

うーん,じゃあ上手い売り方ってことっスかね?

長宮慶次

そうだね、これは売る側からみると、とても上手い売り方だよね。買う側が注意することは,買うかどうかを判断するのに,正確な情報を得ることだ。直感や印象に頼らず、少し考えることで正しい情報を得て欲しい。 例えば,通常は同じ商品を同じ値段で売ってる隣同士のお店が,次のような特売セールをやっていたら,シンジ君はどちらに入る?

 

 

シンジ

なるほど。左のお店の方が安いような印象があるけど,本当は右のお店の方が安いってことっスね?

長宮慶次

そうだ。金額のことだけ考えるならば,右のお店の方が得することになる。そのことに気付かない人は多いんじゃないかな。まあ、どっちも安くなってることには変わりないので、大した失敗ではないけどね。

シンジ

おもしろいっすね。数学って日常生活にも役に立ちますね。

長宮慶次

まあね。数学的思考が役に立つ一例とはいえるだろうね。

シンジ

でも俺が持ってるこのパン屋の商品券も,使わなきゃまだ得してないってことですね。よおし!今からこの券使ってきます!

長宮慶次

いくら分持ってるの?

シンジ

5000円分の券を持ってるっす。得するためにも,使い切ってくるっスよ!では行ってきます!

シンジ君は走ってパン屋に向かった。

長宮慶次

・・・5000円分のパンを買ってくるのか?それって何人で食べるのか?そもそも前回は10000円分のパンを買ったのか?・・・謎だ。数学では解けない。

 

今日の格言・名言

 

長宮慶次
  • 直感に頼るな。思考することを忘れるな。
  • 正しい判断は正しい情報からしか得られない。