合成関数の微分で悩んでいませんか?
「公式は一応,覚えているんだけど・・・」
「よく,最後に掛けるのを忘れてしまうんだよなあ」
「そもそも,なぜ最後に掛けるんだろう?」
そんなあなた!
この記事を読んで,合成関数の微分公式を深く理解しましょう。
そして,もう2度と間違わないようになりましょう!
- 合成関数の微分公式が,うまく使えない高校生・受験生
- 最後に掛けるのをよく忘れる高校生・受験生
- なぜ最後に掛けなければならないのか,知りたい人
まずは公式の確認
まずは公式を確認しましょう。
\begin{align*} \left\{ f \left( g(x) \right) \right\}’=f’ \left( g(x) \right) \cdot g'(x) \end{align*}
使い方はこんな感じです。\( x^2+1 ~\)の微分を掛けているところを忘れないように。
【例題】関数\(~ y=\sin (x^2+1) ~\)を微分せよ。
\begin{align*} y’&=\cos (x^2+1) \times (x^2+1)’ \\ &=\cos (x^2+1) \times 2x \\ &=2x\cos (x^2+1) \end{align*}
なぜ掛けるのか?その疑問を大切にしよう
簡単に解けた人も考えて下さい。なぜ,\(x^2+1~ \)を微分したもの,すなわち\(~2x~\)を掛けなければならないのでしょうか?
- 「だって教科書にそう書いてあるし」
- 「先生がそう言ってたし」
そんなものは理由とは言えません。
そもそも,人から聞いたことをそんなに鵜呑みにしていいんですか?もしかしたら嘘を教えられているかもしれませんよ?
もちろん,教科書や先生は嘘ついてません(笑)。ものの例えです。
数学に限らず,学ぶ者の姿勢として,まずは先人の教えを素直に取り入れることは大切なことです。
しかし,学んでいくうちに,大なり小なり疑問が生じるはずです。
そのときに「先生が言ってるから正しいんだろう」と,考えることを放棄してはいけません。むしろ,その疑問を解決するために調べたり考えたりすることで,理解はさらに深まるのです。
些細なことであっても疑問を持ったら,ぜひその疑問について考えてみて下さい。あなたが伸びる大事なチャンスかもしれません。
疑問は数学のことなら大抵のことは解決しますが,一般的には解決しないことも多々あります(例えば,なぜ戦争はなくならないのか,など)。しかし,たとえ解決しなくても,そこで考えたことは間違いなくあなたの財産になります!
解決するための準備,\( \frac{dy}{dx} \)について
疑問を解決するために,その前提となる知識を確認しましょう。
それは,\( \frac{dy}{dx}~\)についての知識です。
「\( \frac{dy}{dx}~\)って,微分の記号だろう?\(~y’~\)のことだよね?」
はい,間違いありません。高校の先生も最初はそう教えていると思います。
ただ,勉強が進んでくると,それだけでは不十分です。
実は,\( \frac{dy}{dx}~\)はひとかたまりの記号ではなく,分数と見なすことができます。ですから,\(dx~\)と\(~dy~\)は,単独で扱えることになります。知っていましたか?
例えば,次のように分母を払うことも可能です。
\( y=5x^3+2x~\)より \begin{align*} \frac{dy}{dx}=15x^2+2 \end{align*} 両辺に\(~dx~\)を掛けて \begin{align*} dy=(15x^2+2)dx \end{align*}
「ああ,何か見たことある」という人もいるでしょうけれど,「えっ?そんなことしていいの?\( \frac{dy}{dx}~\)がバラバラになっちゃってる!」と思う人もいるかもしれません。
先ほどもお伝えしたとおり,\(dx~\)も\(~dy~\)も,普通の計算と同じように扱うことが可能です。
\(dx~\)はもともと\(x~\)の増加量,\(dy~\)はもともと\(y~\)の増加量です。それぞれ,その極限をとったものです。もともと増加量すなわち数値だったのですから,数値のように扱えるのです。
このあたり,厳密には数学的によくない表現であることは承知しておりますが,わかりやすさを優先しております。ご容赦下さい(笑)。
この,\( \frac{dy}{dx}~\)についての知識があれば,合成関数の謎について解決することができます。
合成関数の微分の正体は,”置換”微分である
合成関数を微分することは,置換してから微分していることと同じです。
教科書に,「置換積分」は載っていますが「”置換”微分」は載っていません(笑)。私の造語です。
前述の問題で説明しましょう。
【解答】 \(~ y=\sin (x^2+1) ~\)について,\(~ t=x^2+1~\)とおくことにより \begin{cases} t=& x^2+1 \\ y=& \sin t \end{cases} と表せる。第1式を\(~x~\)で微分し,第2式を\(~t~\)で微分することにより,次の2式が得られる。 \begin{cases} \frac{dt}{dx}=2x \\ \frac{dy}{dt}=\cos t \end{cases}
上の式は\(~x~\)で微分したので,分母が\(~dx~\)になっています。下の式は\(~t~\)で微分したので,左辺の分母は\(~dt~\)になっています。
微分と言えば反射的に\( \frac{dy}{dx}~\)だと思ってしまう人もいるかもしれませんが,何を何で微分したのか,意識しておきましょう。
ここがわかれば,もう分かったも同然です。
したがって \begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\frac{dy}{dt} \cdot \frac{dt}{dx} \\ &=(\cos t )\times 2x \\ &=2x\cos (x^2+1) \end{align*}
\( \frac{dy}{dx},~\frac{dy}{dt},~\frac{dt}{dx}~ \)はすべて分数と同じように扱うことができます。ですから, \begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\frac{dy}{dt} \cdot \frac{dt}{dx} \end{align*} が成り立つことは分かりますね。
あとは普通に代入するだけです。
そう,掛けていたものは,\( \frac{dt}{dx}~\)だったのです。
複雑な関数でも微分できます
これが理解できれば,次のように複雑な問題であっても,丁寧に置換していけば理解できます。
ちょっと大変ですが,頑張って下さい。
【例題】関数\(~ y=\sin^2 (\log x) ~\)を微分せよ。
【解答】\( t=\log x \)とおくことで,\(~ y=\sin^2 (\log x) ~\)より \begin{cases} t=\log x \\ y=\sin^2 t \end{cases} さらに,\( m=\sin t ~\)とおくことで \begin{cases} t=\log x \\ m=\sin t \\ y=m^2 \end{cases} それぞれ,\(x,~t,~m~\)で微分して \begin{cases} \frac{dt}{dx}&=\frac{1}{x} \\ \frac{dm}{dt}&=\cos t \\ \frac{dy}{dm}&=2m \end{cases} したがって \begin{align*} \frac{dy}{dx}&=\frac{dy}{dm} \cdot \frac{dm}{dt} \cdot \frac{dt}{dx} \\ &=2m \times \cos t \times \frac{1}{x} \\ &=2 \sin t \times \cos t \times \frac{1}{x} \\ &=\sin 2t \times \frac{1}{x} \\ &=\sin (2\log x ) \times \frac{1}{x} \\ &=\frac{\sin(\log x^2)}{x} \end{align*}
2回置換していることがわかりますね。
慣れてくれば,いちいち置換していることを明示しなくても,次のように解くことができます。
【解答】 \begin{align*} \frac{dy}{dx}&=2\sin (\log x ) \times \left\{ \sin (\log x) \right\}’ \\ &=2\sin (\log x ) \times \cos (\log x ) \times \frac{1}{x} \\ &=\sin(2\log x) \times \frac{1}{x} \\ &=\frac{\sin (\log x^2 )}{x} \end{align*}
問題集の解答などは,こちらしか書いてないことが多いです。ただ,初めてこれを見て,すぐ理解できる人ばかりではないでしょう。
慣れるまでは,置換してから微分し,慣れてきたら上のように置換せずとも微分できるようになりましょう。
まとめ
いかがだったでしょうか。
今回は合成関数の微分公式を確認し,なぜ固まりの微分をかけるのか,について説明しました。
置換してから微分していたんですね。
微分は考えることよりも,正確に作業として行うことが重要です。
ミスを少なくするためには,今回学んだことも含めて自分なりのスタイルを作り上げなければなりません。
そのためには訓練が必要です。
理解しただけで満足せず,ドリルのようにたくさんの問題で練習しておきましょう。
合成関数を微分することは,置換して微分しているのと同じである。
この記事が,高校数学を学ぶ高校生・受験生に役立つことを願っています。