【数Ⅱ】恒等式の解き方をマスターするために、恒等式と方程式の違いを理解しよう

高校数学のツボ

恒等式の問題を、何となく解いている人はいませんか?

  • 一応解けるんだけど、イマイチ恒等式のことがわからない・・・
  • どの問題が恒等式の問題かわからない・・・

そんなあなたは、この記事を読んで恒等式の理解を深めましょう!

 

この記事が役に立つ人
  • 恒等式がイマイチ分からない高校生、受験生
  • 高校数学を学び直したい社会人

よくある問題例

【例題】

次の式が\(~x~\)についての恒等式であるとき,実数の定数\(~a,~b,~c~\)の値を求めよ。 \begin{align*} \frac{x^2+x+2}{x^3-6x^2+11x-6}=\frac{a}{x-1}+\frac{b}{x-2}+\frac{c}{x-3} \end{align*}

教科書にも載っていそうな,よくある問題です。解答の1例を示します。

 

解法その1

\( (x-1)(x-2)(x-3)=x^3-6x^2+11x-6 \)である。\\ 両辺に\(~x^3-5x^2+11x-6~\)をかけた式 \begin{align*} x^2+x+2=a(x-2)(x-3)+b(x-1)(x-3)+c(x-1)(x-2) \end{align*} もまた恒等式である。この右辺を展開すると \begin{align*} x^2+x+2=(a+b+c)x^2-(5a+4b+3c)x+6a+3b+2c \end{align*} であることから,両辺の係数を比較して \begin{cases} a+b+c&=1 \\ 5a+4b+3c&=-1 \\ 6a+3b+2c&=2 \end{cases} これを解いて \begin{align*} a=2,~b=-8,~c=7~ \quad \cdots \text{(答)} \end{align*}

少し勉強した人であれば,まあ、解ける人は多いでしょう。しかしここでとどまってはいけません。

最初のうちは、解ければいいや、で進んでいくのも仕方がありません。

しかしもし、あなたが勉強している割に点数が伸びない、、、と悩んでいるとしたら、解けている問題、わかっているつもりになっている基本事項(例えば上のような問題)について,見直しましょう。

 

恒等式とは何か?方程式との違いは?

では質問です。恒等式とは何ですか?

改めて問われると、答えにくい質問ですよね。 漠然としてますし、厳密に答えるのは難しそうですね。

では質問を替えます。

恒等式と方程式の違いは何でしょう?

この質問にすぐに答えられないようであれば、あなたはまだ恒等式のことを理解できていない、と断定して良いでしょう。どうですか?

では、恒等式と方程式の例をお見せしましょう。これを見れば答えられる人は増えます。

 

(恒等式の例) \begin{align*} x^2-x=x(x-1) \end{align*}

(方程式の例) \begin{align*} x^2-x=0 \end{align*}

どうですか?何となく分かりますよね。

ぶっちゃけて言えば「恒等式の左辺と右辺は、同じ式である」といって良さそうです。「ただ式変形しただけ」とも言えますね。

では方程式との違いは、何と答えればいいでしょうか?

方程式は普通、解をもちます。つまりそれは、「方程式を満たす値は有限個である」ということです。

長宮慶次
長宮慶次

例えば\(~n~\)次方程式は\(~n~\)個の解をもちます。つまり有限個ですね

 

それに対して、恒等式を満たす値は無数にあります。当然といえば当然です。ただ式を変形したものをイコールで結んでいるだけなので、何を代入しても成り立ちます。

ということで、恒等式には二つの大きな特質があることがわかりました。

  • 恒等式の左辺と右辺は式を変形しただけで、同じ式である
  • 恒等式には、どのような値を代入しても成り立つ

 

恒等式には2つの解法がある

恒等式に2つの特徴があるということから、恒等式の解法も2つあることがわかります

1つは先ほど見せた【解法その1】で、係数比較法といいます。

長宮慶次
長宮慶次

名称は、、、覚えなくてもいいですけど、簡単なので覚えてしまいますね(笑)

もう1つの解法、数値代入法の解答例を示しておきましょう。問題はさっきと同じです。

 

解法その2

(前半は【解答その1】と同じ) \begin{align*} x^2+x+2=a(x-2)(x-3)+b(x-1)(x-3)+c(x-1)(x-2) \end{align*} これが恒等式であるとき,任意の実数\(~x~\)について成り立つ。\(x=1,~2,~3~\)を代入することで \begin{cases} 4&=2a \\ 8&=-b \\ 14&=2c \end{cases} したがって \begin{align*} a=2,~b=-8,~c=7~ \quad \cdots \text{(答)} \end{align*}

 

この問題に関しては、係数比較法よりも数値代入法の方が楽に解けましたね。

このように,解法によって解答時間が大きく変わることもあります。

問題集を解くときなど,できれば複数の解法で考える習慣をつけましょう。

 

恒等式の問題であることをどうやって見分けるのか

「解法が2つあることはわかりました。でもいつ使えばいいんですか?恒等式って書いてないとき,どうやって恒等式の問題って見抜くんですか?」

生徒から受ける,よくある質問の一つです。

でもここまで読んだあなたなら、分かりますよね。

そう、恒等式はどんな値でも成り立つのですから、次のようなキーワードがあれば、恒等式です。

  • \(x~\)がどのような値であっても成り立つとき・・・
  • 任意の実数\(~x~\)について成り立つとき・・・

これらのキーワードを見つけたら,その式はすべて\(~x~\)についての恒等式です。

数字や式には目が行きますが,問題文に注意を払わない人は多いです。問題文にはヒントとなるたくさんのキーワードがあります。見落とさないようにしましょう。

この数値代入法について,次のような質問を受けることがあります。

 

「\(a,~b,~c\)を求めたあと,最後に逆を確認しなくてもいいんですか?学校の先生に必ず確認するように指導されたんですけど・・・」

 

おそらくその先生は,「\(a,~b,~c\)を求めたところではまだ必要条件でしかない,だから十分条件であることを確認しなさい」と指導されているのだと思います。

 

私はその先生とは違い、必要十分条件なので逆を確認する必要はない、と考えています。

 

例えば先ほどの問題は,整理した式が2次式になります。なので\(~x=1,~2,~3~\)の3個の値で成り立つ式である以上、方程式ではあり得ず、恒等式になることは自明です。

 

長宮慶次
長宮慶次

\(n~\)次方程式は\(~n~\)個の解をもちます。

ただ、高校の先生の中には「高校数学の範囲では自明ではない」と考える先生がいるかもしれません。そして数学的には必要十分条件であることを承知の上で、教育上「ちゃんと逆を調べなさい」と指導している可能性はあると思います。

 

それは1つの意見でしょうから,私は否定するつもりもありません。

 

どうしても気になるなら,逆を確認してもいいと思います。それで減点する大学は無いと思います。

 

この記事のまとめ

いかがでしたか?

恒等式と方程式は明確に違うものであり、恒等式には二つの特徴があることがわかりましたね。

そこから、恒等式には二つの解法があることがわかり、問題によって適切に使い分けてほしいと思います。

この記事のポイント
  • 恒等式の右辺と左辺は同じ式である
  • 方程式が有限個の値で成り立つのに対し、恒等式は任意の値で成り立つ
  • 恒等式の解法は、係数比較法と数値代入法があり、問題によって使い分けよう
  • どのような値であっても、任意の値について成り立つ、などのキーワードがあれば,恒等式の問題である。

 

この記事が、高校数学を学んでいるあなたのためになれば嬉しいです。

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